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遠い夜明け
（CRY FREEDOM）
１９８７年／英
［監督］リチャード・アッテンボロー
［出演］ケビン・クライン／デンゼル・ワシントン

［あらすじ］

人種隔離政策（アパルトヘイト）により公然と有色人種差別が横行する７０年代の南アフリカ。
自由主義を自負し、白人でありながらアパルトヘイトに批判的な新聞記者ドナルドは、
黒人解放運動の若き指導者スティーブ・ビコに面会する。
そのカリスマ性を危険視する政府により軟禁状態におかれるビコは、
不自由な身ながらも捨て身に活動し、黒人の誇りを説き、解放を訴え続ける。
ビコの思想と活動に感化したドナルドは、公私にわたり彼を支持するようになるが、
ビコは逮捕され獄中死を遂げ、ドナルドも危険因子扱いされ軟禁される。
南アの惨状とビコの思想を世界に訴える為、ドナルドは祖国南アからの亡命を決意する。
　

［感想］

悲しいのは、全て実話である事。

この映画が作られた当時も未だアパルトヘイトが施行され続けており、
映画の中では、なにも解決しないままのアパルトヘイト問題に、
ただただ激しい憤りと悲しみを憶え、
ラストで無事国外脱出したドナルドに望みを賭けるばかりです。
この後、イギリスに亡命したこの映画の主人公ドナルド・ウッズ氏は本を出版し、
南アの惨状を全世界に訴え、この映画の監修にも参加し、
アパルトヘイト解決の一端を担ったそうです。

映画公開から数年後、世論、マスメディア、国連安保理、全世界からの一斉批難や制裁を受け、
この非道なる政策は晴れて撤廃されるのですが、
邦題どおり、途方に暮れそうな遠い「夜明け」。
今もなお人種差別傾向が残っているらしい南ア、そして世界中に残る人種差別、
・・・未だ、夜は明けきっていないのです。

優劣無く、ただ、共存を望んだだけの黒人達。
有色人種を劣者と定め、武力・暴力でねじ伏せた白人達。
ビコ達は、蔑みの眼差しを送る白人達を、真っ直ぐ、強く、見つめ返しました。
自分達が何一つ、間違っていないから。

真実を伝えるこの映画の力強さ。どんな教科書も叶わない力強さ。
これこそがメディアの心髄です。

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