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ラストエンペラー
（THE LAST EMPEROR）
１９８７年／伊＝英＝中
［監督］ベルナルド・ベルトルッチ
［出演］ジョン・ローン／ジョアン・チェン

［あらすじ］

若干３歳で中国・清朝皇帝に即位。しかし、その三年後に清朝崩壊。
退位後も、紫禁城に巣食う魑魅魍魎に祭り上げられ、
太平洋戦争時には日本の策略により、カイライ帝国・満州国の皇帝に。
奇しくも、人生で二度皇帝の座に就き、二度皇帝の座を追われた、
愛新覚羅溥儀（あいしんかくらふぎ）の波乱の人生。
　

［感想］

第二次世界大戦を知らない世代で、愛新覚羅溥儀の名を知る人は、
たいがいこの映画で学んだと言っても過言ではない、歴史映画の超大作。
傀儡（カイライ）という言葉など、この映画を見なければ一生知らなかった言葉でしょう。
西洋人の作った映画で、日本史の授業以上の事を学べます。
ただ、若干美化気味なので、ストーリーを事実として鵜呑みには出来ませんが。
　
たった一人の人間の生涯、しかも、自由を束縛された操り人形のような人生。
常に時代の渦の中心に据えられ、翻弄され続けた溥儀の、あまりにも数奇な運命に釘付け。
教科書の上ではたった１ページ程度の出来事なのに、
その背景には、こんな壮大な物語があるのです。だから歴史は面白い！
　
宮廷雅や踊りといった、西洋人好みの絢爛豪華な東洋美は、過剰なほどの演出。
まぁ、歴史部分は、西洋人にとってはまるで認識の無い出来事なので、
ストーリーで楽しめない分、無駄に派手なのはご愛嬌。
　
当事国として時代背景が判る分、日本人には何倍も楽しめる映画なのですが、
戦争から５０余年が経過しているとはいえ、日本侵略の被害者の方々の事を思うと、
やはり手放しで「面白い！」と言うのは申し訳ないような気がします・・・。
　
「門を開けろ！」溥儀の叶わぬ叫び。
溥儀の心を支えた稀少な人物、アーモやジョンストンとの別れ。
紫禁城を追われる際、沸きあがる兵士達の歓声の中、
一度も紫禁城を振り返る事なく立ち去った溥儀。
雨の中を笑顔で出て行く第二皇后と、花を涙ながらに食べる皇后。
廃人になってしまった皇后を見て、涙を流す溥儀。
そして、ラストの太和殿のこおろぎのシーン。
・・・等々、泣いたシーンはいくら挙げてもキリがありません。
ここぞというシーンでの繊細な心理描写と音楽は、心のツボをとらえ、
幾度となく泣かせてくれます。
　
３時間半にも及ぶ長丁場のこの映画を観終わって、もしまだ気力が残っていたなら、
長いついでに、溥儀のその後を描いた「火龍」を御覧になる事をお勧めします。

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